この記事では土用の丑の日の意味と由来、そして、うなぎを食べる風習の由来について詳しくお話します。
目次
土用の意味
土用とは季節の変わり目の約18日間のことを言います。
具体的には季節が始まる四立(しりゅう)の立春・立夏・立秋・立冬それぞれの直前18〜19日間のことです。
そのため、土用は1年間に4回おとずれます。
正式な名前は「土旺用事(どおうようじ)」と言って、季節の変わり目に「土の気が旺盛になる」という意味があります。
土用の由来
土用の由来は、古代中国から伝わる五行思想(ごぎょうしそう)です。
五行思想では、万物が火・水・木・金・土の5元素からなると考えられています。
「土用」の「土」という字は、この5元素の「土」のこと。
5元素は万物に通じるため、季節にもそれが当てはめられました。
でも、「土」だけが1つ余ってしまったため、季節の間に「土」を入れ、雑節(ざっせつ)として位置付けられたのです。
土用は季節が始まる日である立春・立夏・立秋・立冬の直前18〜19日間。
18〜19日間とあいまいなのは、黄道座標(こうどうざひょう)を使った計算で割り出されるためです。
土用の最初の日を「土用入り」、最後の日を「土用明け」と言います。
現在では、うなぎを食べる日として立秋前の夏土用が一番有名ですね。
2021年の土用はいつ?
2021年の土用は下記の通りです。
土用の種類 | 土用の期間 | 四立 |
---|---|---|
冬土用 | 2021年1月17日 ~ 2月2日 | 2月3日が立春 |
春土用 | 2021年4月17日 ~ 5月4日 | 5月5日が立夏 |
夏土用 | 2021年7月19日 ~ 8月6日 | 8月7日が立秋 |
秋土用 | 2021年10月20日 ~11月6日 | 11月7日が立冬 |
四立(しりゅう)の前日18日間と覚えると分かりやすいですね。
丑の日の意味
丑の日とは、十二支(じゅうにし)で日付を数えたときの「丑(うし)」になる日のことです。
十二支とは干支(えと)でお馴染みの12種類の動物の総称のこと。
子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)
これは古代中国に由来していて、干支の他にも時刻や方角、日にちにも使われます。
普通のカレンダーの日付には、十二支が載っていないので、「干支カレンダー」を参考にすると、今日が何の動物の日なのかが分かりますよ。
土用の丑の日の意味
ここまでの話をまとめると、土用の丑の日とは、季節の変わり目にある土用の18〜19日間のうち、十二支で数えた日付が丑の日のことです。
2021年の土用の丑の日は?
ちなみに、2021年の土用の丑の日は2021年7月28日です。
夏土用:7月19日(月)~8月6日(金)
上記の夏土用のうち、「丑」の日は7月28日ですね。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|
7月辰 19日 | 巳 20日 | 午 21日 | 未 22日 | 申 23日 | 酉 24日 | 戌 25日 |
亥 26日 | 子 27日 | 丑 28日 | 寅 29日 | 卯 30日 | 辰 31日 | 8月巳 1日 |
午 2日 | 未 3日 | 申 4日 | 酉 5日 | 戌 6日 |
補足:土用の丑の日は1度に2回訪れることもある
十二支で日付をあらわすと、13日目にはまた同じところに戻ります。土用は約18日間あるので、年によっては「丑の日」が2回訪れることがあります。
この場合、最初の丑の日を「一の丑」、2番目を「二の丑」と言います。
それでは、最後の疑問「うなぎを食べる風習の由来」について見ていきましょう。
うなぎを食べる習慣の由来3つの説
一般に「土用の丑の日」というと夏土用を指します。
この日に、うなぎの蒲焼を食べると夏バテ防止に良いとされています。
でも、この風習はどこから始まったのでしょうか?
本来、うなぎの旬は夏ではなく冬
今でこそ、夏でもおいしい養殖のうなぎが食べられるようになりましたが、本来うなぎの旬は秋から冬にかけてです。
冬が近づくとうなぎは冬眠のために栄養を蓄えるので、脂が乗っておいしくなるのです。
でも、うなぎを食べる「土用の丑の日」は夏。
なぜ、旬でもない夏にうなぎを食べることになったのでしょうか?
その起源は江戸時代に始まりました。
ここでは3つの説をご紹介します。
1. 平賀源内(ひらが げんない)説
これは一番、有力な説と言われています。
江戸時代に平賀源内という人がいました。
彼は西洋の学問や技術の研究者をする蘭学者(らんがくしゃ)でした。
学問だけでなく陶芸や絵画の才能も発揮する多彩な人物です。
そんな彼のもとに知人のうなぎ屋が相談に訪れました。
平賀源内が鰻屋の店主にアドバイス
店主:
冬が旬のうなぎは、夏になると売れません。何か夏でもうなぎを売る良い方法はありませんか?
平賀源内:
季節の変わり目は体調を崩しやすい。昔から土用の丑の日には頭に「う」のつく食べ物が良いと言われている。
また、夏土用の時期は、暑さが激しく夏バテを起こしやすい。だから、精のつく食べ物が良いとも言われている。
うなぎは「う」のつく食べ物だし、精もつく。
これを宣伝するため、店先に「本日丑の日、鰻食うべし」と貼り紙を貼ってみてはいかがだろうか?
貼り紙効果でお店が大繁盛
店主は、さっそく平賀源内のアドバイスに従い貼り紙を貼ってみました。
すると、見慣れない貼り紙を見て、お客さんがお店の前で足を止めるようになりました。
そこへ店主が平賀源内から教わった宣伝文句を使い、うなぎをアピールしたのです。
その結果、お店は大繁盛。
その話を聞いた他の鰻屋もマネをするようになり、次第に土用の丑の日はうなぎを食べるという風習が定着したのです。
土用の丑の日は頭に「う」のつく食べ物がよい
昔から、土用の丑の日には、「丑(うし)」にちなんで、頭に「う」のつく食べ物が良いとされています。
例えば、うどん、ウリ、梅干し、ウサギ、馬肉(うま)、牛肉(うし)などです。
また、夏土用の時期は、夏バテを起こしやすいため、精のつく食べ物が良いともされていました。
そのため、昔から土用しじみ、土用餅、土用卵などが食べられてきました。
平賀源内は、もともとあった「う」のつくもの・精のつくものを食べるという風習を利用して鰻屋を繁盛させたというわけです。
補足:「うなぎ」と「梅」、実は食べ合わせ抜群!?
土用の丑の日には頭に「う」がつく食べ物が良いという話。
この中には「うなぎ」と「梅(うめ)」があります。
でも、「うなぎと梅干しは食べ合わせが悪い」という話が昔からあるのをご存知ですか?
実はこの話、医学的な根拠はまったくないそうです。
むしろ、実際に食べ合わせをした人の話によれば、うなぎの旨みと梅干しのすっぱさが相まって相性が抜群なのだそうです。
2. 大田南畝(おおた なんぽ)の狂歌説
2つ目の説は同じく江戸時代の狂言師・大田南畝の説です。
狂言師というのは簡単に言うと、面白い物語を語る人のことです。
彼はもともとうなぎが大好きだったので「神田川」という鰻屋に頼まれ、うなぎの宣伝になるような狂歌を作りました。
その内容が「土用うなぎは食あたりせず薬になる」というもので、これがきっかけとなり、土用の丑の日にうなぎを食べる風習が根付いたという説です。
3. 春木屋善兵衛(はるきやぜんべい)の説
3つ目の説は、神田泉橋通りにある「春木屋善兵衛」という鰻屋の説です。
その昔、春木屋善兵衛が大名からうなぎの蒲焼の大量注文を受けたそうです。
1日では作りきれなかったため、「子の日」「丑の日」「寅の日」と3日間かけて作りました。
すると、「丑の日」に作ったうなぎだけが変質せずに悪くならなかったそうです。
そのことから「うなぎの蒲焼は、丑の日に限る」となったという説です。
補足:土用にして良いこと・悪いこと
土用はうなぎを食べる意外にもいろんな風習があります。ここでその一部をご紹介します。
土用にして良いこと
- 土用の虫干し(むしぼし)
虫干しというのは、衣類や書物を陰干しして風を通し、カビや虫から守ることです。夏土用の時期には昔から「虫干し」をする習慣があります。 - 丑湯(うしゆ)
土用の丑の日に、薬湯に浸かって疲れをとるという風習です。江戸時代の頃は、桃の葉やよもぎの葉を入れていたそうです。
土用にしてはいけないこと
- 土用の土いじり
土用の時期になると、土をつかさどる「土公神(どくしん・どくじん)」という神が土を支配するため、土いじりをしてはいけないと言われています。そのため、現在でも家の建築の基礎工事、種まきなどの農作業はこの時期を外すことが多いようです。 - 引っ越し
「土」は五行思想の方角で「中央」にあたるため、どの方角にも当てはまりません。そのため、移動はよくない時期と言われ、引っ越しや旅行は避けられてきました。
まとめ
ここでは、土用の丑の日の意味と由来、うなぎを食べる風習の由来について解説しました。
土用の丑の日とは、季節の変わり目である土用の期間のうち、十二支で「丑の日」にあたる日のことです。
そして、古代中国の五行思想と十二支に由来していることが分かりました。
うなぎを食べる風習は、平賀源内がうなぎの貼り紙をアドバイスしたことがきっかけという説が有力だということも分かりましたね。
ぜひ、次回の土用の丑の日は、実は相性抜群だと言われるうなぎと梅の食べ合わせにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。