へそくりの語源と意味|お腹のおへそとは無関係?4つの説で解説

へそくりの語源として一番有力なのは「綜麻繰金(へそくりがね)」という聴き慣れない言葉。

綜麻繰(麻糸を巻き取る内職)で稼いだお金という意味です。

昔、お金に困った女性が麻糸を巻き取る内職をしてこっそり貯めたお金が由来です。

そこから転じて「主婦などが、他人に知られないように少しずつためた金」を意味するようになりました。

へそくりの語源と由来は、これが一番有力なのですが、全部で4つの説が存在しています。

ここでは、へそくりの語源と意味について詳しくご紹介していきます。

ご興味のある方はぜひお読みください。

目次

「へそくり」の語源1:麻糸を巻き取る内職で稼いだお金説

こちらが冒頭でお伝えした説です。

この節では、「へそくり」の語源は「綜麻繰金(へそくりがね)」とされています。

少し難しい漢字なので、分かりやすくするために、へそくりを「へそ」と「くり」に分けて解説していきます。

「へそ」は漢字で「綜麻」

「へそ」は漢字で「綜麻」と書きます。

綜麻は「麻糸を巻きつけた束」を意味します。

糸巻き
糸巻き(綜麻)

機織り機を使って着物を織るときに使う「麻の巻き糸」が綜麻です。

機織り機と杼(ひ)

「くり」は漢字で「繰」

へそくりの「くり」は「繰」と書きます。

これは「繰る」という動詞で、「糸を巻き取る」という意味です。

「綜麻繰(へそくり)」は麻糸を巻き取る仕事のこと

「へそ」と「くり」の意味を合わせると「綜麻繰(へそくり)」となり、「麻糸を巻き取って束を作る」仕事を意味します。

昔、お金に困った女性たちは、家計を支えるために麻糸を巻き取って束を作る「綜麻繰(へそくり)」と呼ばれる内職をしていたそうです。

「綜麻繰金」は江戸時代の国語辞書にものっている

へそくりをして得たお金を「綜麻繰金(へそくりがね)」と呼びますが、これは江戸時代の国語辞書『俚言集覧(りげんしゅうらん)』にものっています。

綜麻繰金 綜麻を繰てためる金なり

出典:俚言集覧. 下 明治33 に−を – 国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号139)

この「へそくり金」という言葉が略されて「へそくり」になったというのが最初の説です。

綜麻(へそ)はどうやって作られるの?

綜麻は、精麻(せいま)と呼ばれる、麻の莖(くき)から作られます。

精麻(せいま)

この茎を煮て、乾燥して、細かく裂いて、さらにていねいに1本の糸にして巻いていくことで麻糸は作られるのです。

「へそくり」というお仕事、結構、技術が求められる大変な仕事だったんですね。

「へそくり」の語源2:内緒で綜麻を母親のために貯めた説

へそくりの2番目の説は、母親のためにこっそり貯めた綜麻が由来ではないかという説です。

これは、最初の説と同じく「綜麻繰(へそくり)」という漢字から来ています。

ただし、由来となる話が少し違います。

女性民俗学で有名な瀬川清子さんの書いた論文

江戸時代後期に菅江真澄(すがえますみ)という旅行家がいました。

彼の書いた「外浜奇勝(そとがはまきしょう)」という本には、彼が旅行中、人々の生活習慣などを記した内容が詳しく書かれています。

この本を参考に、女性民俗学で有名な瀬川清子さんが書いた論文の中で綜麻繰(へそくり)の由来とも言えるお話がのっているのです。

その昔、家計の助けにと、毎日、綜麻繰(へそくり)の内職をする女性がいました。

夫と暮らす彼女には心残りなことが1つあります。

それは、故郷に一人残してきた母親のこと。

彼女の母親はすでに高齢のため、亡くなったときに備えて、経帷子(きょうかたびら:死者に着せる着物)を仕立てておく必要がありました。

そこで彼女は、内職で作った綜麻を母親の着物を織るために売らずに少しずつ貯めていきました。

本来であれば、すべての綜麻を売り、家計を支えるためにお金を得なければいけなかったのですが、母親のため、夫には内緒で作った麻糸を貯めていったのです。

このお話から

「綜麻繰(へそくり)で作った綜麻を夫に内緒で貯める」→「夫に内緒で貯めたお金」

という形で意味が変化したのではないかという説です。

経帷子(きょうかたびら)の風習

経帷子というのはいわゆる死装束(しにしょうぞく)のことです。

お葬式のときに亡くなった人に着せる白い着物ですね。

江戸時代のころは、子が親のために経帷子を仕立てる(作る)風習がありました。

「へそくり」の語源3:大切なお金をおへその奥に隠していた説

3つ目の説は、へそくりの漢字がさきほどの説とは異なります。

「へそくり」を「臍繰り」と書きます。

「臍」は、お腹のおへそのこと。

これは「おの奥からり出す(お金)」という意味から来ています。

昔、お金などの貴重品は、腹巻などでお腹に巻きつけて持ち歩いていたそうです。

そのことから、お腹に隠すお金を「へそくり」と呼ぶようになり、今の意味になったという説です。

次の説も、意味が似ています。

「へそくり」の語源4:腹巻のことを意味していた説

4番目の説もお腹のおへそに関する説ですが、語源が「臍包(へそくるみ)」から来るとされています。

臍包(へそくるみ)とは、「腹巻きなどを腹に巻きつけること。または腹巻のこと」を意味してます。

先ほどの説と同じように、腹巻の下にお金を隠し持つ習慣から、臍包(へそくるみ)がお金を隠すといったニュアンスへと変化していきました。

さらに「へそくるみ」→「へそくり」と音が変化したのではないかというものです。

まとめ

以上、へそくりの4つの語源についてお話しました。

冒頭でもお伝えした通り、へそくりは「綜麻繰金(へそくりがね)」がもっとも有力な語源です。

これは綜麻繰(へそくり)という内職をして、女性がこっそり貯めたお金という意味から生まれました。

現代に例えるなら、主婦が「株で稼いだお金」が「こっそりためたお金」の代表格になり、そこから「株 = 内緒のお金」という意味が定着するようなものですね。

それが「へそくり」というお仕事だったわけです。

後半の説では、お腹のおへそを語源とするへそくりの由来もご紹介しました。

後半の説は「へそくり」という音から「臍」が当て字となり、意味が後付けされたのではないかと言われています。

日常、使っている言葉の起源が分からないって、よく考えてみると不思議なことですね。