そうめんとひやむぎの違いは、JAS(日本農林規格)により定められた麺の太さにあります。
機械製法の場合、そうめんは直径1.3mm未満、ひやむぎは直径1.3mm〜1.7mm未満となっています。
ただし、手延べの場合、1.7mm未満ならどちらでも良いとされています。
JAS(日本農林規格) | そうめん | ひやむぎ |
---|---|---|
機械製法の太さ(直径) | 1.3mm未満 | 1.3mm 〜 1.7mm未満 |
手延べの太さ(直径) | 1.7mm未満 | 1.7mm未満 |
この記事では、さらにそうめんとひやむぎの違いについて詳しく解説しています。
ご興味のある方はぜひご覧ください。
目次
そうめんとひやむぎの違い
そうめんとひやむぎには、太さの他にも製法や由来などの違いがあります。
代表的な3つの違いを表にまとめると次の通りです。
3つの違い | そうめん | ひやむぎ |
---|---|---|
機械製法の太さ(直径) | 1.3mm未満 | 1.3mm 〜 1.7mm未満 |
本来の製法 | 手延べ麺 | 切り麺 |
由来 | 中国のお菓子 | 細打ちのうどん |
この他にも、色の違い、味の違いなどがありますので、順番に見ていきましょう。
1. そうめんとひやむぎの太さの違い
そうめんとひやむぎの違いとして代表的なのがJASで定められた太さの違いです。
冒頭でお伝えした通り、機械製法の直径1.3mm未満ならそうめん、1.3mm〜1.7mm未満ならひやむぎという基準です。
ただし、手延べの場合はどちらも「直径1.7mm未満」という基準だけなので両者に違いはありません。
「機械製法」と「手延べ」で基準が違う2つの理由
機械製法と手延べで太さの基準が異なる理由は2つあります。
手作りだと多少の誤差が生まれるから
手延べ麺の場合、麺の太さが均一にはならず、同じ麺でも細いところや太いところが生じることがあります。
そのため、手延べ麺は、1.7mm未満であれば「そうめん」と呼んでも、「ひやむぎ」と呼んでもどちらでも良いことになっています。
徳島の名産「半田そうめん」の存在
もうひとつの理由は、江戸時代から伝わる由緒正しい手延べそうめんが「太いそうめん」として有名なことです。
徳島の名産「半田そうめん」はひやむぎと同じくらいの太さの「そうめん」です。
もしも、太さのみを基準に区別してしまったら江戸時代からの名産品である「半田そうめん」は「ひやむぎ」と名前を変えなければいけません。
一方、機械製法で太さだけを合わせた直径1.3mm未満の麺はすべて「そうめん」と名乗れてしまうことになります。
これはちょっとおかしいということで、2004年に基準が改定され、手延べ麺の場合、1.7mm未満なら「そうめん」と名乗ることができるようになりました。
補足:「手延べ」って何?
手延べというのは、1本の太い生地を延ばして重ねてを繰り返し、最終的に細い麺を作る製法のことです。
中国の料理人が、巧みな手さばきで麺をどんどん細く長くしていく様子をテレビで一度は見たことがあるかもしれません。
手延べそうめんの作り方
そうめんは、1本の太い麺を、よりをかけながら伸ばして伸ばして伸ばして、最終的にそうめんの細さまで伸ばします。
その後、天日干しをして乾燥させたのが手延べ干し麺です。
そうめんの細さまで生地を伸ばしたら、麺が切れてしまいそうですよね。
ところが、小麦粉に含まれるグルテンという成分をうまく活用すると、麺に弾力が生まれ、延ばしても切れない麺になるそうです。
ポイントは、塩水と小麦粉を混ぜたあと生地をよくこねること。
生地はこねればこねるほど、小麦粉の中のグルテンという成分が出てきてコシと弾力が生まれます。
さらに麺を限界まで伸ばしたら一晩寝かせると、麺が熟成されてもっと伸びるようになります。
このように麺を延ばして熟成させてを繰り返しながら、細い麺が作られていきます。
最後は天日干しにして乾燥させて、均等の長さに切ったら手延べ干し麺のできあがり。
そうめんを作るのにもこんなに手間ひまがかかっていたんですね。
2. そうめんとひやむぎ製造方法の違い
そうめんとひやむぎの作り方の違いは、本来そうめんは「手延べ」、ひやむぎは「切り麺(麺打ち)」という点です。
そうめんは1本の太い麺を時間をかけて伸ばし、そうめんの細さにまでする手延べという製法で作られています。
一方、ひやむぎは、生地を麺棒で薄く平たく延ばしたあと、刃物を使って麺の太さで切る製法(麺打ち)です。
実際には、ひやむぎの中にも手延べがあったり、そうめんの中にも切り麺があります。
もともとは、製法で区別されていたそうめんとひやむぎですが、最近は機械製法が普及し、作り方が多様化したため区別があいまいになってきました。
そのため、日本農林規格(JAS)によってそうめんとひやむぎを太さで区別するという基準が設けられました。
3. そうめんとひやむぎ由来の違い
そうめんの由来は「中国のお菓子」、ひやむぎの由来は「うどん」という違いがあります。
そうめんの由来
そうめんの由来は、奈良時代に中国のから伝わった「索餅(さくべい)」というお菓子だと言われています。
日本では、「麦縄(むぎなわ)」と呼ばれているそうです。
索餅(さくべい)は、小麦粉と米粉を練った、ほうとうのような麺状の生地を縄状にねじって油であげた食べ物です。
見た目は、そうめんというよりはドーナッツ。
でも、これがそうめんの由来だといわれています。
索餅が伝わってから500年ほど経った鎌倉時代~室町時代、再び中国から手延べ麺の作り方が伝わりました。
それが「索麺(そうめん)」「素麺(そうめん)」と変化していき、現在のそうめんになったと言われています。
ひやむぎの由来
ひやむぎの由来はうどんです。
うどんを細切りにして、冷やして食べたことがひやむぎの始まりとされています。
細切りのうどんのことを「切り麦」といいますが、それを冷やして食べると「冷麦(ひやむぎ)」となります。
反対に、温めて食べる切り麦のことを「熱麦(あつむぎ)」と呼びます。
4. そうめんとひやむぎの色の違い
そうめんとひやむぎは、ぱっと見た目では判断がつきにくいですね。
そのため、両者を見分ける目印として、ひやむぎの中にはピンク色の麺が入っているという違いがあります。
これもそうめんとひやむぎの1つの違いと言えます。
ただし、そうめんとひやむぎの区別のために付けられた色付きの麺が、最近では色を楽しむ目的でそうめんにも付けられるようになりました。
そのため、今では色付きだからといって簡単に「ひやむぎ」とは言えなくなってしまいました。
5. そうめんとひやむぎ味の違い
そうめんとひやむぎには、微妙に味の違いもあります。
それが「甘さ」の違いです。
実際に、味覚センサーを使った研究では、ひやむぎの方が甘さの数値が少し高いことが分かっています。
出典:https://ima.goo.ne.jp/column/article/4335.html
理由としては甘さの元となる「でんぷん」が細いそうめんの場合、茹でるときにお湯の中に溶け込んでしまうからではないか言われています。
実は、風味にも微妙な違いがあります。
手延べそうめんは、製造の過程で麺が乾かないよう表面に油を塗るため、ひやむぎにはない植物油の風味がそうめんにはあるからです。
まとめ
そうめんとひやむぎは、もともと由来も製法も異なる食べ物でした。
それが時代とともに互いに似通っていき、ほとんど区別の付かない食べ物になっていったのです。
そのため、JASによって機械製法の場合は、直径1.3mm未満ならそうめん、直径1.3mm〜1.7mm未満ならひやむぎという基準が設けられました。
たった0.4mm以下の違いで名前が変わってしまう食べ物って他にあるのでしょうか?
そうめんとひやむぎの違いを調べてみたら、現在では限りなく似ていることが分かりました。