外国人が「バンコク」と読んでいるタイの首都。
実は正式名称はとても長い名前なんです。
正式名称は
クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット
です。
なぜ、バンコクの正式名称はこんなに長いのか?
正式名称にはどんな意味が込められているのか?
どうしてこのような名前が付けられたのか?
ここでは、長〜いバンコクの正式名称の謎に迫っていきたいと思います。
興味のある方がぜひお読みください。
目次
バンコクの正式名称
バンコクの正式名称は次の通りです。
クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット
タイ語では、次のような表記になります。
กรุงเทพมหานคร อมรรัตนโกสินทร์ มหินทรายุธยา มหาดิลกภพ นพรัตนราชธานีบูรีรมย์ อุดมราชนิเวศน์มหาสถาน อมรพิมานอวตารสถิต สักกะทัตติยวิษณุกรรมประสิทธิ์
タイ人もバンコクの正式名称を言えない!?
タイの人たちはバンコクのことを正式名称で呼んでいるのでしょうか?
タイでは、正式名称の最初の単語を取って「クルンテープ」もしくは「クルーンテープ・マハーナコーン」と呼んでいます。
「クルンテープ」はタイ語で「天使の都」という意味。
実は、現地の人たちですら正式名称を言えない人が多いのだそうです。
バンコクの正式名称の意味
バンコクの長い正式名称にはどんな意味が込められているのでしょうか?
調べてみると、次のような意味であることが分かりました。
インドラ神がヴィシュヌカルマ神に命じてお作りになった、神が権化としてお住みになる、多くの大宮殿を持ち、九宝のように楽しい王の都、最高・偉大な地、インドラ神の戦争のない平和な、インドラ神の不滅の宝石のような、偉大な天使の都
バンコクの正式名称は、パーリ語とサンスクリット語で構成されているので、仏教などの経典と同じです。
神々しい意味からしても、まるでお経のようですね。
正式名称の中に出てくるインドラ神、ヴィシュヌカルマ神はヒンドゥー教や仏教に出てくる神です。
インドラ神はヒンドゥー教の中心的な神、ヴィシュヌカルマ神は建築の神と言われています。
バンコクの正式名称の由来
バンコクの正式名称を名付けたのは、タイの初代国王であるラーマ1世です。
彼がタイの国王になったのは1782年。
この年、トンブリーという場所から現在のバンコクに首都を移すことになりました。
そのとき、新しい首都が偉大な都市になってほしいという想いを寄せて、ラーマ1世は詩を読んだのです。
インドラ神がヴィシュヌカルマ神に命じてお作りになった、神が権化としてお住みになる、多くの大宮殿を持ち、九宝のように楽しい王の都、最高・偉大な地、インドラ神の戦争のない平和な、インドラ神の不滅の宝石のような、偉大な天使の都
そうです。
それがそのままバンコクの正式名称になったというわけです。
バンコクの正式名称は何度も変更している
バンコクの正式名称は、私が調べる限り4回変更されています。
1782年
クルンテープ・プラマハーナコーン・ボーウォーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロ ム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット(ラーマ1世)
18??年
クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロ ム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット(ラーマ4世)
※「ボーウォーンラッタナコーシン」の部分が「アモーンラッタナコーシン」に変更。
1916年
プラナコーン県
1971年
ナコーンルワンクルンテープトンブリー(革命団布告)
1972年
クルンテープマハーナコーン(革命団布告)
参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%82%AF
つまり、現在の正式名称は、「クルンテープマハーナコーン」です。
「儀式的正式名称」と「行政用語としての正式名称」
実は、バンコクの「正式名称」には、「儀式的正式名称」と「行政用語としての正式名称」の2つがあります。
儀式的正式名称というのは、タイの伝統行事やお祭りなどで使われる場合の名前。
行政用語としての正式名称というのは、住民票や免許証、婚姻届など公的な手続きで使われる名前です。
市役所などの手続きで、毎回長い正式名称を書かなければいけないとなると、手続きする側もされる側も大変です。
だから、長い名前は伝統行事などのときだけに使って、普段の行政手続きは「クルンテープマハーナコーン」と短くしているわけです。
補足:長いのはタイの都市名だけじゃなかった!?
実は名前が長いのはバンコクの正式名称だけではありません。
タイ人は苗字も長くて複雑なのです。
そもそもタイではもともと王族や貴族以外の人は苗字を持っていませんでした。
それが、1913年に名字法というのが制定され、身分に関係なく苗字をもつことが義務付けられたのです。
そのとき、タイの人たちはそれぞれ思い思いに自分の名字を考えました。
タイでは、オンリーワンが良いとされ、特に長い名前はカッコいいという価値観があります。
それが名字にも反映され、他の人と被らない長くて複雑で個性あふれる名字をみんなが考えたのです。
だから、タイの名字は長くて複雑で、日本のように同姓同名ということがほとんどありません。
名前が長いのは、バンコクの正式名称だけではなかったのです。
みんなお互いの本名を知らない?
タイの人たちの名字が長く複雑なので、お互いにニックネームで呼び合うのが普通なのだそうです。
だから、仲の良い友達同士ですら、相手の本名を知らないことがよくあるのだとか。
タイの人たちは自分の名前もコロコロ変える
バンコクの正式名称が何度も変わってきたように、タイでは自分の名字や名前を変えることも多いそうです。
昔から、タイでは名前が運気を左右すると信じられていて、何かうまく行かないことがあると自分の名前を変えることがあるのです。
そのため、日本とは違い、同じ家族でも名字が違うということが普通なのだそうです。
「バンコク」という名前の由来は?
バンコクの正式名称が長い名前だとしたら、そもそも「バンコク」という名前はどこから来たのでしょうか?
あの長い正式名称の中に「バンコク」という言葉は一切ありません。
クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロ ム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット
勘違いから呼ばれるようになった「バンコク」
実は、バンコクという名前は外国人の勘違いから生まれた名前だったのです。
アユタヤ王朝時代(1351年 – 1767年)に、チャオプラヤ川の西のトンブリーという場所にポルトガル人が駐屯していました。
ポルトガル人はバンコク全体の地名が知りたくて、現地人に地名をたずねました。
すると、現地の人から「バーンマコーク」という名前が返って来たのです。
「バーンマコーク」は意味で分解すると、
- バーン → 水辺の村
- マコーク → ウルシ科の樹木(アムラミズノキ)
という意味で、「マコークという木が生い茂る川沿いの小さな村」という意味になります。
これをポルトガル人は首都の名前だと勘違いし、タイの首都を「バーンマコーク」として広め、定着させてしまったのです。
この「バーンマコーク」という名前がやがて、「バーンマコーク → バーンコーク → バンコク」と変化していき、今の「バンコク」になったというわけです。
まとめ
ここでは、バンコクの正式名称がとても長いことが分かりましたね。
クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット
名前の意味や由来を調べてみると、その国に特有の文化や歴史的背景があることが分かって面白いものです。
それにしても、想いを込めて付けた正式名称は覚えられず、勘違いで広められた「バンコク」が主流になっていることをラーマ1世がどう感じているかが気になるところです。